物理学者の大栗博司先生が子ども時代に体験した話に触発され、管理人(私)も❝地球を測る❞ことに挑んだエピソードを前編と後編で紹介しました。核心部分をまとめておきます。
ストップウォッチ片手に、沈みゆく太陽が地平線(実際には山の稜線)にちょうど接してから完全に消えるまでの時間を計ります。結果は、2分31秒26(上の画像はそのときのスクショ)。この値から、太陽の大きさ(半径R)と地球から太陽までの距離(L)の比が以下のように求まりました。
$$\frac{R}{L}=\frac{1}{2} \cdot \frac{2π}{60\cdot60\cdot24} \cdot 151 \approx 0.0055$$
この比の実際の値が以下です(太陽の半径Rを約70万km、地球から太陽までの距離Lを約1億5000万kmとしています。下付きの添え字Rを付けて区別しました)。
$$ \frac{R_\mathrm{R}}{L_\mathrm{R}} = \frac{700,000}{150,000,000} \approx 0.0046 $$
このように割と近い値が求まりましたが、ずれの大きさがやや気になります。この微妙な差はなぜ生じてしまったのでしょうか?
※このサイトには関数電卓がありますので、皆さんも実際に計算してみてください(関数電卓 >>> ヘッダーのToolsからも選択できます)。
夕日が沈む角度を考慮する
結論から言うと、最初に管理人が求めた方法では、太陽が地平線に対して垂直に沈んでいくという想定をしていました。後編で示した図1(以下)を見てください。

これは、観察者(地球上にいる管理人)および太陽を真横から捉えたイメージです。この図では、太陽が地平線に向かって垂直に沈んでいく動きしか表現できていません。けれども、実際の太陽は私たちから見て斜めに沈んでいきます。
太陽が斜めに沈む理由は、地球の自転軸が約23°傾いているために、季節によって太陽の赤緯(天の赤道からのずれ)が変わることと、観測地点の緯度が赤道から北もしくは南にずれていることにあります。たとえば東京の緯度は北緯35.7°ですね。
では、管理人が見た夕日はどれくらい斜めに沈んでいたのでしょうか?
結論から言うと、地平線から測って54.3°です(この値の求め方は最後の付録で説明します)。以下の図で、地上の観察者から見て太陽が垂直に沈む場合と、54.3°の角度で沈む場合を確認しましょう。

左が最初に想定した太陽の沈み方、右が実際の沈み方です。このため、後編で出した式(4)には少し修正が必要になります(以下、この式の番号を式(1)と改めて再掲します)。
$$\frac{R}{L}=\frac{ωT}{2} \tag{1}$$
この式に出てくるωは、天球上における太陽の速さ、つまり、
$$ω=\frac{2π}{24h} \tag{2}$$
でした。しかし、太陽は斜めに沈みます。つまり管理人がストップウォッチで計ったのは、ωの垂直成分の速さω´によって太陽が地平線を通り過ぎた時間ということになります。
$$ ω´=ω\,\mathrm{sin}\,54.3° \tag{3}$$
このことから、上の式(1)と式(2)は
$$ \begin{align} \frac{R}{L}&=\frac{ω´T}{2} \tag{4}\\ ω´&=ω\,\mathrm{sin}\,54.3°=\frac{2π}{24h}\mathrm{sin}\,54.3° \tag{5} \end{align} $$
と変える必要があるのです。Tは2分31秒(151秒)ですから、結果は以下のようになります。実際の値と比べてみましょう。
$$ \begin{align}\frac{R}{L}=\frac{1}{2}\cdot\frac{2π\cdot\mathrm{sin}(54.3°)\cdot151}{24h}&=0.0045 \tag{6}\\ \frac{R_\mathrm{R}}{L_\mathrm{R}} = \frac{700,000}{150,000,000} &\approx 0.0046\end{align} $$
ということで、とてもよく一致しました!
なお、上の二つの値とも、導出に概算値や誤差のある値を使っており、ぴたりと一致することを求めても意味はありません。 それでも、紙と鉛筆で ❝地球を測った❞ 計算がここまでよく合うと気持ちがいいものです。
みなさんも身近な現象で❝地球が測れる❞ 事例を探してみてください!
【付録】太陽が沈む角度の求め方
上の計算では、太陽の沈む角度が54.3°であることを説明なく用いました。ここでは、その求め方をまとめておきます。
本文でも少し述べましたが、太陽が斜めに沈む理由は、地球上での観測地点が赤道から北もしくは南にずれていることと、地球が太陽を公転する面に対して地球の自転軸が約23°傾いていることにあります。
実は、次の二つの情報があれば、その場所で見える太陽の沈む角度がわかります。
それは、①観測者がいる場所の緯度(φ)、②その場所・日時における太陽の赤緯(δ)です。赤緯とは、天の赤道からのずれのことで、地球の自転軸が23.4°傾いていることで生じます。この値は、季節によって23.4°~-23.4°の範囲で変化していきます。
この二つの情報から太陽が沈む角度(θ)は、
$$θ=\mathrm{arccos}\left( \frac{\mathrm{sin}\,φ}{\mathrm{cos}\,δ}\right) \tag{7}$$
と求まるのです(この式の導出方法は割愛します)。sinとかcosとか、arccos(アークコサイン)などは、スマホの関数電卓を使えば簡単に計算できます(便利な時代です)。
また、①の緯度φもスマホのGPS機能を使えば簡単に調べられますし、②の赤緯δも国立天文台のサイトで調べることができます。管理人が沈む太陽を観測した場所は(大まかで恐縮ですが)東京で、その緯度φは35.7°です。また、観測した日は2022年3月16日で、その日の赤緯δは約-2°でした。これらの情報からθを計算すると、
$$θ=\mathrm{arccos}\left( \frac{\mathrm{sin}\,35.7°}{\mathrm{cos}\,(-2°)}\right)\approx 54.3°\tag{8}$$
となるのです。ちなみに、赤緯の値δは『理科年表』にも載っています。暦の部の太陽,月という項目に、1月1日~12月31日まで毎日の太陽の位置(赤経、赤緯)や日の出・日の入り時刻などの情報がリスト化されています。興味のある方は確かめてみてはいかがでしょう。
なお、式(7)を見ると、赤緯δがゼロに近い時期は、太陽が沈む角度θは緯度φの値でほぼ決まることがわかります。δがゼロに近づくのは春分の日(春分点)と秋分の日(秋分点)です。管理人がこの観測をしたのは、春分の日に近い3月16日でした。これらの時期は、太陽が沈む角度は観察する場所の緯度だけが寄与することになります。つまり、
$$θ= 90°-35.7°=54.3°\tag{9}$$
という単純な計算で太陽が沈む角度が求まるのです。面白いですね!

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