大栗少年が地球を測った話に触発される【後編】

不定記

前編では、物理学者の大栗博司先生が子ども時代に体験した話に触発され、管理人(私)自身も❝地球を測る❞ことに挑んだ場面を紹介しました。簡単におさらいしておきます。

沈みゆく太陽が地平線(実際には山の稜線)にちょうど接してから完全に消えるまでの時間を計ります。結果は2分31秒26(この測定値を示すストップウォッチ画面をスクショしたのがサムネ画像です)。この値から、太陽の大きさ(半径R)と地球から太陽までの距離(L)の比が導けると予想した管理人は、具体的な式を導出しました。その結果を踏まえ、前回の最後に次のような問題を出しました。

問題

太陽の半径Rと地球から太陽までの距離Lとの比をR/Lとすると、次の中で近い値はどれでしょう?

ア.0.05
イ.0.005
ウ.0.0005
エ.0.00005

結論から言うと、答えはウです。以下でその説明をしますが、まずは成立する式をざっと立てて答えを求めてみます。ただし、厳密な値ではないことをあらかじめお断りしておきます。

※このサイトには関数電卓がありますので、皆さんも実際に計算してみてください(関数電卓 >>> ヘッダーのToolsからも選択できます)。

どんな式から ❝地球を測った❞ のか?

太陽は地球の空(天球上)を24時間[h]で1周します。このことから、天球上における太陽の速さωは、

$$ω=\frac{2π}{24\mathrm{h}} \tag{1}$$

と書けます(詳しくは、付録で解説します)。次に、太陽が地平線(実際は山の稜線)に接してから完全に消えるまでの時間をTとし、その間に天球上を移動する角度をθとすると、

$$ωT=θ \tag{2}$$

と書けます。Tはストップウォッチで計った2分31秒という時間(1秒未満は省きます)、θは視線の角度だと思ってください。

さて、ここまでは地球上から見た太陽の動きに対して式を立てました。今度は、下の図1のように地球と太陽を客観的に見る位置から式を立ててみます。真ん中の破線は地平線のイメージです。太陽が地平線に接する瞬間の太陽の中心から、完全に太陽が地平線に隠れる瞬間の太陽の中心までの視線の角度がθとなることがわかります。

図1 地平線に沈む太陽の模式図

このとき、地球から距離Lだけ離れた太陽が視線の角度θだけ動いたときの実際の移動距離Lθは、だいたい太陽の直径分と見なせます(近似値を使っているわけです)。

$$Lθ \approx 2R. \tag{3}$$

式(3)にRとLが現れていますね。これをR/Lの式に変形し、式(2)を使ってまとめると、

$$\frac{R}{L}=\frac{ωT}{2} \tag{4}$$

となります。ここで、式(1)とT = 151秒[s]を代入すると、

$$\frac{R}{L}=\frac{1}{2} \cdot \frac{2π}{60\cdot60\cdot24} \cdot 151 \approx 0.0055\tag{5}$$

という値が出ます(24hを秒に直して計算しています)。では実際はどうでしょうか? 概算値(太陽の半径Rは約70万km、地球から太陽までの距離Lは約1億5000万km)で計算すると、

$$ \begin{align} R &= 700,000\ \mathrm{km} \\ L &= 150,000,000\ \mathrm{km} \\ \frac{R}{L} &= \frac{700,000}{150,000,000} \approx 0.0046 \tag{6} \end{align} $$

となり、ずれはありますがまずまずの一致度といえそうです。

いかがでしたか? ちなみにこのずれがやや大きいのには、時間の測定誤差以外にも理由があります。それについては番外編でお届けしましょう。みなさんも考えてみてください。

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【付録】導出した式の簡単な説明

太陽・月・星といった天体は空(天球上)を移動していきます。その移動距離や速さはどう決めればいいのでしょうか?

地上の物体であれば「キロメートル」などの尺度が使えます。一方、天体が空を動く移動距離は「視線をどれくらい動かさないといけないか?」、つまり「角度」で決められそうです。この角度の尺度をラジアンといいます。

一見難しそうですが、以下の話を聞けば「なんだ、そのことか」と思うでしょう。

半径rの円の円周の長さが2πrになることは小学校で習います。π(パイ)は3.141592…と無限に続く数でしたね。

この関係式から明らかですが、円周の長さは半径の長さとは無関係に、半径の2π倍になります。実はこの2πというのが角度の大きさで、単位がラジアンになります。2πラジアンは円1周分の角度の大きさ、πラジアンは半周分の角度の大きさのことなのです。

このことを天球上の太陽の通り道(これを日周運動の軌道といいます。ここでは、日周軌道と呼ぶことにします)に当てはめてみましょう。日周軌道は地球を取り囲む大きな円と見なせます。太陽は日周軌道を1周するのに24時間かかるので、その速さをωとすると、式(1)のように書けます。これは「距離÷時間=速さ」の関係を使った式で、ここでいう距離とは天球上の角度のことです。

$$ω=\frac{2π}{24\mathrm{h}} \tag{1}$$

式(2)は、このωを使って「速さ×時間=距離(角度)」の関係から導けます。

$$ωT=θ \tag{2}$$

ここで、半径rの円の周の長さが2πrになることについて考えてみます。2πとは1周分の角度のことでした。では、角度が1周分より小さくなったらどうでしょう。たとえば半周分の角度はπなので、その周の長さはπrです。4分の1周分の角度はπ/2となり、その周の長さはπr/2です。

では、角度がθだったらどうなるでしょう? 今の話の類推から、角度θ分の周の長さはrθとなるはずです。

次に、rを地球から太陽までの距離Lに変えてみます。図1からわかるとおり、このLθは、地球を中心とする半径Lの円周上にある太陽が角度θだけ動いた距離(周上の長さ)であることがわかります。

図1をもう一度見てみましょう。半径Lの円周上を太陽が動いた距離は、だいたい太陽一つ分(直径分)に見えませんか? もちろん、太陽は円の周上を動いているので直線にはなりません。だから、だいたい等しい(近似)ということで、式(3)が出てくるわけです。

$$Lθ \approx 2R. \tag{3}$$

みなさんも身近な現象から、❝地球が測れる❞ 例を探してみてはいかがでしょう。

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